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事業活動の魅力を伝えることの重要性|島田君のパン屋さん 第3話 「自分達だけのもの」

事業活動の魅力を伝えることの重要性|島田君のパン屋さん 第3話 「自分達だけのもの」

日本には約300万の株式会社が存在していると言います。

その中には当然「競合」が存在し”業界内で自社のシェアをどれだけ伸ばすことが出来るのか”という永遠のテーマの下、数多くの経営者が次なる一手を模索し続けています。

島田君のパン屋さん第2話では、数多くの会社の中から自社を就職先として選んでもらうために「人」という要素がとても大きなものであるお話しをしました。

しかし、人が良いだけではより多くの優秀な人材を採用することは難しいでしょう。

今回は会社の魅力を伝えるための別の要素についてのお話をお届けいたします。

今回のキーワードは、ズバリ「映画館」です。

前回までのあらすじ

前回、島田君はユウコちゃんを食事に誘いました。

島田君のパン屋さんか町はずれにあるパン屋さんか。どちらで働くかを決めあぐねていたユウコちゃんに対し、島田君は「自分のことをもっと知ってもらいたい」と話します。

MVVとは別に、そこで働く人の人間性も、働く先を選ぶ根拠となると島田君は理解していました。ユウコちゃんは腹を割って自分の想いを伝えてくれた島田君に対して「会社がどのようなフェーズであっても、ひとりひとり誠実に対応をしていく人間」であるという信頼を持つようになります。その後、島田君の下で働くことを決め、自分もその想いに答えたいと強く思うようになりました。

そしていよいよユウコちゃんが店頭に立つようになります。

ユウコちゃんの明るい笑顔と丁寧な接客もあり、お客さんは徐々に増えていったのですが、

ユウコちゃんにはある不安がありました。

島田君のパン屋さん 第3話 「自分達だけのもの」

朝。まだ自分の靴音が響くほどに閑散としている街を通ってユウコちゃんがパン屋さんにやって来ました。キッチンの奥の方から機械の動く音が聞こえてきます。島田君がパンを焼き始めているようでした。

ユニフォームに着替えると、まずレジカウンターの引き出しを明けて1冊のノートを取り出します。中には「名前」「年齢」「よく購入する商品」「入店する時間」などなど、頻繁に店に通うお客さんの情報が事細かにメモ書きされていました。これはお客さんの満足度を上げるためにユウコちゃんが自発的に始めたことであり、その日の来店に備えてノートをチェックすることが毎朝のルーティンワークとなっていたのです。

このような行動の甲斐あって徐々にお客さんの数も増えていましたが、しかしユウコちゃんには少しだけ不安なことがありました。自分達の店舗からほんの100フィートの距離にあるコンビニエンスストアや、200フィート先のスーパーマーケットの存在です。自分達よりも安価でパンを販売しているそのような競合達が、次第にお客さんを取って行ってしまうのではないかと悩んでいたのです。

ユウコちゃんは作業をしている島田君に尋ねに行きました。
「街には私達のようなパン屋の他にも、安くて美味しいパンを売っているお店がいくつもあると思うの。今は良いかもしれないけどいずれお客さんがそっちに行ってしまうのではないかと不安に思う所もあるわ」

島田君は作業を進めながらもユウコちゃんにこう問いかけました。
「なぜ人は映画館に足を運ぶと思う?」

ユウコちゃんはこう答えました。
「映画が好きで、人よりも早く作品を観たいと言う気持ちが強いから?」

「それもあるかもしれないね。でもレンタルビデオやオンラインで配信された作品を観れば2000円近いチケットを購入して観るよりもだいぶ安く済む。殆どの人はより得をする方を取ると思うんだよ。そんな事実がありながらも何倍ものお金を出してわざわざ映画館に足を運ぶ理由はね、”体験を買っている”からさ」

「体験?」島田君の言葉にユウコちゃんがまた質問します。

「映画館に行かなければ味わえない空気とか、音響とかもそうだし、劇場で食べるポップコーンの味が好きだったり、その場所に昔の恋人との思い出を持っていたり。色々な理由から人はその経験をまた味わうために2000円を払っているんだ」

「でも、私達のお店では映画館のような体験は出来ないんじゃないかな?」ユウコちゃんは懐疑的な視線を島田君に送ります。

「そんなことはないよ。君が手に持っているノートがまさに”体験”なのさ」
島田君の言葉を聞いて、ユウコちゃんはノートの表紙にゆっくりと目線を移しました。

「このお店に来るお客さんは、ただ単にお腹を満たすためだけにパンを買いに来ている訳ではない。ユウコちゃんの丁寧な接客。寄り添った対応。他の店舗では味わえないそういったホスピタリティを体験するためにお客さんはこのお店に来ているのさ。だから、他のお店よりも少しだけ値の張るウチのパンをみんな買って行ってくれる。勿論、味のクオリティもしっかり担保しないといけないけどね」

自覚のなかったユウコちゃんは島田君に言われたことを咀嚼するために少しばかりか時間を要しましたが「君が何気なくやっていた行為が、お客さんの感動体験を生んでいたんだよ」と続けられた言葉を聞いて、戸惑いよりも。お店に貢献が出来ていたという喜びの気持ちが勝るようになりました。

「ありがとう。私達は私達にしか出来ないことを純粋にやり続けていくってことだね」
ユウコちゃんは笑顔で島田君にそう言いながら、袖をまくって一層のやる気を見せるのでした。

「ところで、僕は来週から発売する新商品の試作品を焼いていたところなのだけど」
島田君がオーブンに目をやりながらそう言います。
「ほんと!?是非食べてみたい!今日のランチにでも試食させてよ!」
「それは全然良いんだけど」
島田君はバツの悪そうな顔でこう言いました。
「今日は定休日だよ」

「社会への貢献」と「自社にしかないもの」

島田君がユウコちゃんに「自分達のお店にパンを買いに来てくれる人は、純粋にパンを買いに来るだけでなく、このお店でしか得ることの出来ない体験を買いに来ている」のだと話しました。

会社を選ぶ要素としての「人」は、勿論比重の高いものではあります。しかし、会社はそれだけでは成立しません。自分が携わる業務の内容や他社と差別化が出来るポイントなども大きな要素となります。同じ額の報酬を得ることができるのであれば、人はより社会的な意義のある会社を選ぶでしょう。

「表」だけでなく、「裏」もしっかり伝えてあげる

そして、いくら成長性のある会社であっても、いつだって順風満帆な訳ではありません。時代や人の価値観が変われば、事業の価値もすぐに変わってしまいます、成功やポジティブなテーマだけに目を向けるのではなく、むしろそれ以上にリスクや課題を考え続けることが重要です。

表だけでなく裏もしっかり考え、そしてそれを一緒に働くメンバーに素直に伝えることが、結果として会社の魅力付けになるのです。つまり、「経営者がどれだけ自分の会社を、客観的に見て理解しているのか」が重要なのです。

人だけに依存しない強固な会社を作るために

今回はユウコちゃんのノートの話を参考に、事業や業務においての意義や、他社との差別化を図ることが如何に大切かをお話しいたしました。

いかがでしたか? 今回の記事の内容をまとめると、

  1. 扱っている商材が同じだったとしても、差別化を図るポイントはいくつもある
  2. 「人」などの感覚的な要素だけでなく、事業成長性や課題感など論理的な部分も候補者はちゃんと見ている
  3. 「その会社で働くこと事で何が得られるのか」という事実を伝えてあげることが重要

会社が大きくなるにつれて、個人の働く意義をも見出すことが出来る事業や業務が採用においてとても大きな要素になります。

如何に自社のストロングポイントを語ることができるのか。そして、如何に自社のウィークポイントを経営者が自覚しているのか。採用に一番大事なのは、そこなのかもしれません。


※本記事に登場する人物はすべて架空のものです

文章・村木三 修(むらきみ おさむ)

2021年にライターとしてウィーバー株式会社にジョイン。現在は主に、自身の採用経験を活かしたHR関連のコンテンツ制作に従事している。