新卒採用において、「内定を出しても辞退される」という課題に悩んでいませんか?
現在の新卒採用市場では、学生の多くが複数の内定を保有し、内定承諾後も企業を比較し続けることが当たり前になっています。実際、学生1人あたりの内定保有数は平均2.5社、内定辞退率も60%を超える水準です。
つまり現在の新卒採用は、「採る競争」ではなく、「選ばれ続ける競争」です。
本記事では、実際の企業提案をベースに、
- 内定辞退が起きる構造
- 中小企業が大手に勝つための考え方
- 実践的な内定者フォロー施策
を、体系的に解説します。
企業の新卒採用において、内定から入社までの期間、学生の不安解消や動機付けを行うための継続的なコミュニケーションやイベント施策のことです。
内定者フォローの主な目的は、「内定辞退の防止」、「入社意欲向上」、「入社後の立ち上がり支援(早期戦力化・早期離職防止)」です。
内定者フォロー施策の例
内定者の多くが「人間関係」や「仕事・働き方」に不安を抱えており、内定者フォローにおいてはその解消が重要です。
ダイヤモンド社の調査によると、71.2%の企業が1種類以上のフォロー施策を実施しています。「内定式」を実施している企業は59.3%、内定者同士の懇親会45.9%、先輩社員との懇親会27.6%、人事担当者との面談23.8%です。
学生の満足度が高かった施策は、「職場見学・施設見学」93.6%、「実務体験」91.0%、「内定者同士の懇親会」90.1%、「先輩社員を交えた懇親会」89.0%です。
“職場のリアルを知る機会”と“人間関係の構築”が効くことが分かります。
内定者フォローが重要な理由
「選ばれ続ける競争」へ
現在の新卒採用市場は、内定後の比較検討が一般化しています。
- 学生1人あたり内定保有数は平均2.5社、2社以上の内定保有の学生は65.7%
- 内定辞退率平均は2023年卒65.8%、2024年卒63.8%
- 「採る競争」から「選ばれ続ける競争」へ
大手の採用本格化による学生の揺らぎ
大手志向の学生割合は、2025年卒、2026年卒と連続で50%超えです。物価高騰などにより安定した収入や福利厚生を求める学生が増加中です。
成長環境や裁量を求めて中小を志向する学生も存在しています。しかし日系大手企業が3月1日に採用サイトをオープンし、大半の学生が就職活動を本格化する中で、中小企業の内定を持つ学生は以下の揺らぎにさらされます。
- 大手企業からの追加内定による再比較
- 親・周囲からの大手志向の助言
- 「本当にこの会社でよいのか」という意思決定不安
- 仕事内容・人間関係・職場の雰囲気に対する情報不足
- 入社までの期間が長いことによる心理的距離の拡大
内定辞退が起きる原因
内定辞退は偶然ではありません。ほぼ決まった構造で発生します。内定辞退が起きる3つの原因は、「情報不足」「関係不足」「将来不安」の3点です。
- 情報不足: 仕事内容や働き方が具体的にイメージできない
- 関係不足: 社員との接点が少なく、心理的距離が遠い
- 将来不安: この会社で成長できるか分からない
これらが重なると、学生は「より安心できる選択(=大手)」に流れやすいと言えます。
内定者フォローで中小企業が大手に勝つ方法
中小企業は、大手ほど規模や知名度はありません。仕組みも体制もありません。
一方で、「若手に裁量を与えやすい」という強みがあります。「早く成長したい」と思う学生も多数います。だからこそ、内定後の意味づけの設計が重要です。
内定者フォローを最適化し、大手との差別化の機会として、裁量や成長環境を求める学生の入社意欲を更に高めることも可能です。
基本スタンス:「学生が自分で語れる状態をつくる」
ゴールイメージは、学生が「入社前に、この会社で働く意味と未来を、自分の言葉で語れる状態」です。そのために、どのように内定者フォローの施策を行っていくか設計します。
- ✕ 内定者のイベントを数多く実施
- ◎ 内定者が入社前に「この会社で働く意味と未来を、自分の言葉で語れる状態」をつくるための採用設計
訴求内容の軸:「キャリア形成の速度」
中小企業が大手に勝つ軸は、一言で言えば「キャリア形成の速度」です。
学生が大手を選ぶ理由3点、学生が中小企業に求めていること3点を整理すると、なぜ「キャリア形成の速度」を軸とするべきか分かりやすいです。
学生が大手を選ぶ理由3点
| 理由 | 内容 |
|---|---|
| 安定基盤と福利厚生等の充実 | 規模が大きく、倒産やリストラのリスクが少ない。給与水準が高く、コンプラの意識が高く、福利厚生が整い、長期的なキャリア形成可 |
| 教育体制や研修制度の確率 | 人材育成の仕組みが整っている。体系的にスキルを学べる。先輩社員による指導体制が確立されている |
| 社会的信頼とブランド力 | 親・周囲が理解し、安心する。転職市場でも評価されやすい。業務内容のスケールが大きく、社会的な影響力の高い仕事に携われる。 |
学生が中小企業に求めていること3点
| 期待 | 内容 |
|---|---|
| 若いうちからの裁量権と経験値 | 早い段階から責任ある仕事を任される。実戦経験を早く詰める。経営層との距離が近く、自分の意見が反映される。 |
| 汎用的なスキルの習得 | 大手の分業制ではなく、企画、営業、運用など幅広く関り、自走できる。全体像を把握してビジネスの仕組みを学べる。 |
| 社風への共感と手触り感ある仕事 | 歯車ではなく、自分の貢献をリアルに実感したい。会社のビジョンに共感し、一緒に会社をつくっていきたい。 |
訴求軸
中堅企業の優位:
- 「キャリア形成の速度が早い」
- 経営との距離が近い。若手に任せる範囲が広い。自走できる。成長スピードが早い。会社づくりに関われる。仕事の手触りを得やすい。
内定者フォローの中心メッセージ:
- 「この会社は20代の密度が濃い」
学生に伝えたい具体の内容:
- 1年目に何を任されるのか
- 3年目にどこまで到達可能か
- どんな先輩がロールモデルになるのか
- どのような成長機会があるのか
心理変化のための3つの段階
内定者は、最初は企業を比較する立場にいます。会社の「外側」です。
その学生が「この会社で働く意味と未来を自分の言葉で語れる」、つまり会社の「内側」にいる状態にまで心理が変化するためには、3つの段階が必要です。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 1. 共感形成 | 会社の理念・ビジョン・ストーリー理解 |
| 2. 関係構築 | 社員、同期との信頼関係構築 |
| 3. 当事者化 | 仕事や会社づくりへの参加意識 |
外側にいる学生が、最初から当事者として思考することはできません。
共感、関係構築、当事者化の3つのステップを段階的に踏むことで、「この会社を選んだ」という意識が、「この会社で働く」に変わります。「比較する立場」から「関わる立場」へ心理が変化することにより、大手の内定が出ても意思が揺らぎにくくなります。
設計方針:「多面的・段階的・個別最適」
内定者フォローは、1種類より複数施策を組み合わせた方が高評価割合が高く、1種類のみ実施と4種類以上実施では約20pt差あります。
| 方針 | 内容 |
|---|---|
| 多面的 | 面談、懇親、見学、実務接点、学習支援を組み合わせる |
| 段階的 | 半年間をかけて、共感形成→関係構築→当事者化へ深める |
| 個別最適 | 少人数の採用→学生ごとの不安・志向に応じて濃く設計 |
特に中小企業の採用人数は大量採用の大手企業と比べて一般的に少ないため、個別最適は差別化しやすいポイントです。不安の種類、就活継続意欲、成長志向、親の影響度などを個別に確認し、フォローしていきます。
内定者フォローの施策一覧
企業が実施している内定者フォロー施策の上位、学生の満足度が高い内定者フォロー施策の上位を、心理の変化に合わせた3つの段階に整理すると、下記のようになります。
| 施策例 | 段階 |
|---|---|
| ・キックオフでの経営メッセージ ・社長ストーリー、価値観のコンテンツ化 ・内定者専用コンテンツ配信 | 1. 共感形成 |
| ・コミュニケーション基盤の構築 ・キックオフ人事面談 ・内定者キックオフ会 ・若手社員座談会 ・ロールモデル社員座談会 ・ランチ懇親会 ・メンター制度 | 2. 関係構築 |
| ・ビジネス理解セミナー ・職場見学・部署見学 ・若手社員1日密着企画 ・実務体験 ・疑問解消会 ・内定者プロジェクト | 3. 当事者化 |
内定者フォローのスケジュール例(半年間)
内定者フォローを半年間かけて実施する場合の月次のスケジュール例、ポイントと施策案は下記となります。
1カ月目 設計・スケジューリング
2カ月目 意思決定の再定着
ポイント
- 大手選考本格化に対し、心理的距離を縮め、企業理解を一段深める
- 「管理される」ではなく「歓迎されている」と感じさせる
施策案
コミュニケーション基盤の開設
- LINE(LINE WORKS)、Google Chat、Slackなど
- 月次連絡、イベント案内、日常的な軽接触
キックオフ面談(人事 x 内定者個別)
- 就活継続状況の確認
- 内定承諾時点の決め手の再確認
- 現在の不安のヒアリング
- 今後のフォロー希望の把握
内定者キックオフ会(対面)
- 社長からのメッセージ ※5~10分
- 会社の事業戦略と今後の方向性 ※役員, 事業部長
- 若手社員との交流会
- 内定者同士の相互理解
- カードゲーム、ワークショップ etc.
メンター制度開始
- 若手社員1名 x 内定者1名
- 面談の頻度:月1回
- 質問、相談、雑談の窓口
- ✕ 「大手に行くことに決めました」
- 〇 「大手か迷いがあるので相談させてください」
- 留意点:
- 自己開示 → 心理的事実を聞く
3カ月目 仕事&業界理解
ポイント
- 「この会社で何をするのか」を明確にする
- 比較軸をブランドから仕事へ移す
- 大手との比較で「この会社での成長の速さ」を具体化
施策案
ビジネス理解セミナー
- 内容:業界の全体像、事業構造、競争優位性、若手の活躍フィールド
若手社員座談会
- 参加者:1〜3年目社員中心
- 話す内容:入社理由、仕事のリアル、ギャップと乗り越え方、キャリアの変化 etc.
ロールモデル社員座談会(キャリア加速モデルの提示)
- 参加者:ロールモデル社員
- 話す内容:1年目〜5年目の成長イメージ、任されてきた範囲、評価の考え方(人事)
4カ月目 揺らぎ把握・個別フォロー
ポイント
- 大手内定が出始めるタイミング。本音把握と再魅力づけ
- 満足度が特に高い施策は「職場見学」と「実務体験」。抽象論より、リアルを提示
施策案
個別キャリア面談
- 他社選考・内定状況確認、気持ちの変化確認、不安の具体特定、入社後に期待することの再整理
職場見学・部署見学
- 見学内容:オフィス、営業現場、会議
- ポイント:「働く人(先輩社員)の表情」が学生に見えること
ランチ懇親会
5カ月目 職場のリアル体感
ポイント
- 「知っている会社」から「働く姿を想像できる会社」へ
- リアルな仕事の難しさや厳しさまでを見せて、納得感を高める
施策案
実務体験プログラム
- 営業同行、物件提案準備見学、会議同席、市場調査体験、簡易ワーク
若手社員1日密着企画
- 当日の流れ共有、仕事の考え方説明
- ポイント:楽しいことだけでなく、大変さも見せる
質問解消会
- 業務、評価、働き方、配属、残業など現実的論点に回答
- 匿名質問も可能にする(事前に質問したいことのアンケートを実施)
会社全体の行事に招待
- キックオフ
- 月次全体会議 etc.
6カ月目 当事者化
ポイント
- 内定者を「お客様扱い」から卒業させ、会社づくりの一員として扱う
- 内定者が「自分もこの会社の未来に関わる側だ」と思えれば、単なる比較対象ではなくなる。
施策案
内定者プロジェクト
- 例1 学生向け採用広報案の企画
- 例2 入社後に受けたい研修の提案
- 例3 若手向け新規企画アイデア出し
役員または責任者へのプレゼン機会
- 企画発表、フィードバック、期待の言語化
今後のフォロー設計共有
- 内定式以降の予定
- 入社前の準備事項
- 必要スキルや学びの方向性
内定者フォローの成功ポイント
内定者フォローの施策を実行し、成功させるためには、下記のような点にも留意することが大切です。
やりすぎない
多面的な施策は高評価につながります。一方で、学生の拘束時間や負担感への配慮が必要です。人事側の工数にも限界があります。「学生が自分で語れる状態をつくる」ための設計としつつ、1回1回を重くしすぎないようにします。
先輩社員の巻き込み設計
先輩社員の振る舞いによっては逆効果となるケースもあります。人事の設計に沿って、事前にフォローの意図や「何を伝えてほしいか」「何を避けるべきか」「どの程度リアルを見せるか」などのコミュニケーションの内容を共有しておきます。
心理的事実を聞く
採用選考と内定者フォローでは、確認するべきことに根本的な違いがあります。
- 採用選考で確認すること
- 客観的事実(過去に行ってきた具体的な方法)
- 内定者フォローで理解しておくこと
- 心理的事実(仕事やキャリアに対する志向や価値観)
入社意思決定のために、学生の心理的事実に沿ってコミュニケーションを行い、口説いていく必要があります。しかし人は心理的事実を簡単には明らかにしません。そのために大切なのが、相手が心を開きやすくするための自己開示です。
例えば、人事もしくは先輩社員が学生から入社動機を聞かれるタイミングは、自己開示のチャンスです。個人的で具体的な内容を織り込み、共感してもらうことが重要です。先輩社員にも予め用意していただく必要があります。
(参考文献:「人事と採用のセオリー」曽和 利光氏)
まとめ
最後にまとめとして、内定者フォローで大切なポイントをまとめておきます。
- 内定者フォローのゴールイメージ
- 内定者が、自分の意思でこの会社を選ぶ理由を深めること
- 内定者フォローで実現すること(目的)
- 辞退防止
- 入社意欲向上
- 入社後立ち上がり支援(早期戦力化・早期離職防止)
- 内定者フォローで中小企業が大手に勝つ方法
- 基本姿勢:「学生が自分で語れる状態をつくる」
- 訴求の軸:「キャリア形成の速度」
- 設計方針:「多面的・段階的・個別最適」
- 内定者フォローで満足度の高い施策(≒有効な施策)
- 「職場のリアルを知る機会」と「人間関係の構築」
- 内定者フォローの成功ポイント
- やりすぎない
- 先輩社員の巻き込み設計
- 心理的事実を聞く
いかがでしたか?
今回は新卒採用の内定者フォローで辞退率を下げる施策と成功のポイント、大手に勝つ中小企業の採用戦略を解説しました。
内定辞退に課題を感じている企業様へ
私たちウィーバー株式会社は、お客様に課題を提案して並走するオーダーメイド型の採用支援サービスを提供しております。
- 採用戦略立案・採用計画立案
- 採用コンセプト設計
- 母集団形成(媒体選定・媒体運用設計・運用最適化)
- 選考プロセス運用支援
- 内定者フォロー設計
まで、一貫してご支援可能です。どうぞお気軽にお問い合わせください。

東京都立大学工学部卒。株式会社インテリジェンス(現パーソルキャリア)に新卒入社。人材紹介のIT企業担当、求人サイトdodaの広告制作ディレクターを経験後、Web広告ベンチャーに転職。Webサイトの広告ネットワーク事業を拡大し、執行役員に就任、採用責任者を経験。2017年、当社設立、代表取締役に就任。中小ベンチャー企業向けに人事採用コンサルティング・運用支援サービスを提供。9期目。プライベートでは1児の父、PTA会長。



